よろず感想置き場

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映画「神と共に 第一章:罪と罰」の感想

【前置き】
・最高の映画でした。もし現在、観ようかどうか迷っているのなら、今すぐ観るべきです。
・私は映画館でみました。VFX、撮影技術、演技、とにかく映像周りが素晴らしいので、可能なら映画館での視聴がおすすめです。
・本編の内容に触れますが、未視聴の人が読む前提で、台無しにならないよう注意して書きます


はい。前置きの通り、最高の映画でしたので、作品の紹介をした後で良かったポイントを挙げます。

この映画はとある消防士が死ぬシーンから始まります。ビルの火災現場で身を挺して子供を守った勇敢な消防士。彼がこの映画の中心人物、キム・ジャホンです。
自分が死んだことに気付かず、周りの人に話しかけるが誰も返事をしない。誰かに触れようとしても身体がすり抜けてしまう。
主人公死亡から始まる物語のテンプレート通りと言って差し支えの無い、とても解りやすい始まりです。

そんな彼を迎えに死後の世界【冥界】から二人の使者、【警護】のヘウォンメクと【弁護士】のドクチュンがやってきて、「冥界にある七つの地獄で、生前の罪を問う七つの裁判をします。全部無罪だったら生まれ変わることができますよ(ざっくり意訳)」と説明を受け、ジャホンは納得する猶予すら与えられず、冥界へ送られます。
二人の使者達の【リーダー】カンニムと合流し、
ジャホンは状況に困惑しつつも三人の使者と共に七つの地獄での裁判に臨むのでした。

この作品、とにかく映像が凄い。決して予告編で派手なシーンだけをチョイスしているのではなく、本編ではもっともっとド派手な映像が拒否権の無いわんこそばの如く続々と提供されます。豪勢ですね。

特に予告編でも少し流れた市街地戦のシーンは逸品です。
カンニムの衣装が黒のロングコートなのは、この超機動アクションで映えさせる為に逆算して決まったのではないかと視聴中に勝手に想像してしまった程です。
「なぜ冥界の人はこんな超機動アクションが出来るのか?」という点について、作中で明確な説明は無かったと記憶していますが、「まぁ実際そうなってるから良いか」「だって冥界だもん」などと納得してしまう程に映像の説得力がスゴいです。
だって冥界だもん。


作品の核となる部分に「冥界(死後の世界)」「閻魔大王」「輪廻転生」といった、日本でも馴染みのある宗教モチーフが出てきます。
「嘘をつくと死後の世界で閻魔様に舌を抜かれる」的なアレです。
そういった中世からある虚構のモチーフと「弁護人付きの裁判」という現実にある近代の制度のミックスがこの作品の面白さの一つです。
もっとも、現実の裁判とは異なり、被告の行動のありとあらゆる全てが冥界の裁判所にはお見通しで、偽証や黙秘は不可能である為、弁護人は「確かに嘘はついたが、あれはついても良い嘘だ」とか「確かに酷い事はしたが、それには事情があった」という風に、情状酌量の余地を争っていく形になります。
その点で現実との隔たりがあるものの、弁護人が人道的なロジックで以て切々と無罪を主張する様は胸を打つものがあります。
というのも、被告人であるキム・ジャホンくん、超良い奴なのである。そして超苦労人なのである。
あの世にも正義というものがあるのなら、この人は救われなければならない。
弁護人の主張は裁判官だけでなく視聴者にも向けられている故に、映画を観た人も「無罪!この人絶対無罪だよ!」という気持ちにさせられるのです。
自己弁護だけではこうはならない。弁護人付きの裁判だからこその揺さぶりが発生していると思います。

無論、好青年が救われる流れで一本調子のトントン拍子に進むだけの映画ではありません。
下界に残されたジャホンくんの遺族を襲うトラブル。
話が進むに連れて明らかになるジャホンくんの人生の闇。
お話は複雑さを増し、先が読めない展開になっていきますが、その全ては最後の裁判の結果に収束していく構造になっています。上手い。めちゃくちゃ上手いです。

そしてその全てが収束した先の最後の裁判、私はめちゃくちゃ泣きました。
比喩ではなく涙が線になって両目から落ち続ける状態になりました。
ヤバいです。ものすごい破壊力があります。

「嘘をつくと死後の世界で閻魔様に舌を抜かれる」と年長者に言われたところで、実際に「嘘をつくのをやめよう」となる人はほとんどいないと思います。
しかしこの映画を観て「真っ当に生きよう」となる人はかなりの多数派になるはずです。
古今東西のおとぎ話というのはそういった効果を期待して伝承されてきたものだと思いますが、そういった意味でこの作品は「最新のおとぎ話」だと言えます。

「神と共に 第一章:罪と罰
映画館からの帰り道、普段より真っ直ぐな背筋になった気がした素晴らしい映画でございました。
続編も公開が近いので、絶対にみにいく所存です

(おわり)