よろず感想置き場

映画、漫画、ゲーム、旅行、メシ、イベント、その他体験したことの感想を書きます

2019年みた映画

晦日に書き始めました。
長いこと記事は書きませんでしたが、見ていて面白かった映画がたくさんあるので、2019年を振り返るついでに何本か紹介していきます

・イップ・マン外伝 マスターZ

カンフー映画「イップ・マン」シリーズのスピンオフ作品です。
過去のシリーズでイップ・マンに敗れて武道の世界から離れたチョン・ティンチのその後を描いた、タイトル通りの外伝的位置付けな作品です。

シリーズ物なので過去の作品も見ないと完全には楽しめないと思うかもしれませんが、全く見てなくても問題ないです。
私も全くみてなかったですが、めちゃくちゃ面白かったですし、個人的には2019年ベスト映画です。

この映画はカンフー映画ですので、全ての要素がカンフーアクションの為にあるようなものです。
キャラクターもストーリーもセットもBGMも全部です。
なので、視聴者はアクションシーンを期待し、アクションシーンを堪能すればよいシンプルな設計です。

で、肝心のアクションですが、半端ないです。
動きのキレ、カメラワーク、アクションが映える舞台設定のセンス、どれを取っても一級品です。
アクション中心の構成、その先にあるのが一級品のアクションシーン、ストレートでカッコいいですね。

ストーリーやキャラクターもシンプルで好みです。
これらに厚みを持たせるのもアクション。
徹頭徹尾アクションが中心。美しいですね。

クライマックスのシーンが大好きです。
マックス・チャン演じるチョン・ティンチは、そこで名乗りをします。とてもシンプルですが、この映画の全ての文脈が詰まった名乗りです。最高ですね。

というわけで、カッコよくて美しくて最高の映画「イップ・マン外伝 マスターZ」を見る機会があれば是非触れて欲しいです。

・マッキー


2012年公開のインド映画。日本でも2013年に1度公開されていますが、2019年にリバイバル上映されたのをみたので、2019年にみた映画として紹介します。

この映画は「ガールフレンドを横取りしようとする悪い金持ちに殺されてしまった青年がハエに生まれ変わって復讐をする映画」です。
設定が割ととんでもないですが、本当にこの通りに映画が進みますし、この設定からはみ出る事の無いまま映画は終わります。設定より監督がとんでもないと思います。

肝心の中身ですが、前述のストーリーの起承転結には関わらない細かい部分で「なんかちょっと変だけど面白いぞ」という演出がみっちり詰まっていて、「設定も演出も変」というのが端的な感想なんですが、自分はその変な部分がクセになったので、「もっと変なの頂戴!」と思いながら映画を観ていました。

単に「変」と言うとマイナスの印象もありますが、他に適切な誉め言葉が見つからないので、「変」と言う言葉に含まれてるプラスの印象だけ抜き出そうとしてなんとか使っている感じです。

監督のラージャマウリ氏は「視聴者を楽しませる仕掛けを5分に1回作る」のをモットーにしていると聞いたことがあるので、そういったサービス精神でエンターテイメントを積み上げていくとああいう作品になるのかなーと想像しています。
やっぱり監督が一番変だと思います。

楽しく感じたのは『変』な演出だけではなくて、ハエに生まれ変わった主人公を、まるで特撮ヒーローを応援する未就学児のような素直な気持ちで「頑張れ!やっちまえ!」と思えるような『熱い』展開もありますし、敵役の悪い金持ちも最初は「どうしようもないクズ野郎」という印象なんですが、最終的には「『クズだけど最高の悪役』じゃんか」という感じで感謝と尊敬を捧げたい気持ちになっていました。
個人的な2019年ベスト悪役は彼です。

同じ監督が同様に『変』と『熱い』と『クズだけど最高の悪役』とその他色々エンターテイメントを積み上げて作ったと思われる「バーフバリ」という作品シリーズも最高なので、機会があれば見てみてはどうでしょうか。


・毒戦 BELIEVER

前述の2作品とは異なるノワールなサスペンスです。残虐な表現もあります。

ジョニー・トー監督の「ドラッグ・ウォー 毒戦」を韓国でリメイクした作品です。元の作品をみてないので、このリメイク作だけの話になります。

この映画は「正体不明の麻薬王・イ先生を追う麻薬捜査官が、麻薬組織の末端構成員の助けを借りて闇社会に切り込んでいく」作品です。

展開が速かったり登場人物が急に増えて名前を覚えきれなかったりで混乱した瞬間もあったんですが、とてもパンチの効いた闇社会の人間がバンバン出てくるし、バレたら終わりなのに状況がどんどん酷くなってハラハラするので、「そうか。この辺が見所なんだな」と作品の側から教えてくれるようなパワーが映像とストーリーにあると思います。

先の読めない展開が進んでいき、映画が終盤に入る頃、こちらの意識は「この映画、どう終わるんだ?」という方に向いていきます。
下調べ無しでみにいったので、「続編があるのかな?」と思ったほどです。
今にして思えば脚本家の手玉に取られていただけなのですが、とにかく想像力を掻き立てられるし揺さぶりも掛けられるし良いストーリーの映画だなーと思います。

記事には書かないと思いますが、リメイク前の「ドラッグ・ウォー 毒戦」もそのうちみると思います。リメイクした人達に「俺達もああいうのやりたい!」と思わせたパワーがあるはずなので、楽しみです。



せっかく大晦日なのでなんか書こうかなと思った次第ですが、かなり楽しかったので、今後も書きやすい動機を見つけて思考の整理がてらになんか書こうかなーと思います。


以上

映画「神と共に 第二章:因と縁」の感想

【前置き】
・この映画は「神と共に 第一章:罪と罰」から直接繋がっている作品であり、第一章を観てから第二章を観るのがストレートな楽しみ方だとは思いますが、いくつかの理由により「先に第二章から観るのも【有り】なんじゃないか」という話をします。
・まだどちらも観てない人が読む想定で書きます
・↓第一章の感想(こちらも未視聴想定で書いてます)
映画「神と共に 第一章:罪と罰」の感想 - よろず感想置き場

はい。最高の映画の続編をみてきました。
第一章は「亡者になったキム・ジャホンくんが使者達に冥界へ導かれて、生前の罪を問われる7つの裁判を受けることになり、すべてを無罪でクリアすれば生まれ変われる事ができるのですが、果たしてクリアできるのでしょうか?」というお話でした。
第二章はそのお話の直後から始まる直結型の続編です。

基本設定についての説明は第一章で済んでいる想定らしく、作中で改まって多くを説明することはありません。
第一章で明らかになる謎の一部が「視聴者は当然知っているもの」としてお話を構成するピースとして使われたりもしています。
なので、「ストレートに第一章から続けて観ようぜ!第二章も最高だったから映画館にGOだ!」という話をするのが自然だと思いますが、あえて「先に第二章から観る」人を想定して書いてみようと思います。

理由として、まず1つは「この項を書いている時点で既に第一章の公開が終了している映画館が多い」ということです。
第一章から観るべきだと聞くと「第二章だけ観ても仕方がない」と思ってしまうかもしれません。
それはとても勿体ないのです。
この映画は映像がスゴいのです。冥界のシーンではVFXを駆使して「明らかにこの世の現象ではない」という迫力の有る映像を見せつつ、「それでこの先一体どうなるんだ?」という引っ掛かりを持った演出になっているので、それだけで十分見所がある作品なのです。
上質な映像なら映画館で観た方が濃い体験になるはずです。いま映画館で観れるなら観た方が良いとお薦めします。

2つめの理由として、「第一章のしっかりとしたダイジェストが用意されている」を挙げます。
上映前に流れるこのダイジェスト、すごく丁度良いのです。
登場人物、基本設定、おおまかなお話の流れを抑えつつ、第一章の最も肝心な領域にはノータッチなので、未視聴の人にもピッタリの仕上がりだと思います。決して置いてきぼりにはさせないという配給会社の意気込みを感じます。
映画館で流れるのと全く同じものが公式でアップロードされてるので、予告編と合わせてチェックするのも良いと思います。

割と重要そうな情報も含まれていますが、その先の先の先が本編には用意されているので、作品の肝は守られていると安心して下さい。

第一章ダイジェスト

第二章予告編


3つめの理由として、「両作品に繋がりはあるけれど、お話の肝心な領域はそれぞれ独立しているので、単体でも楽しめる」を挙げます。
登場人物、基本設定などの作品の基礎部分は第一章も第二章も同じですので、第一章を視聴済みなら第二章の理解もスムーズになる部分が多いと思います。
しかしそれはあくまでも基礎部分の話です。
お話のディープな部分ではそれぞれ異なる設定が出たりもしてますので、必ずしも「第一章の視聴が必須!」とは言えません。
そしてこれは同時に、「第二章だけを観ても、第一章のクライマックスがどうなるかはわからない」という事でもあるのです。
なので、「第二章から観ても問題ない」と言える余地は確実に在ります。
後は観る気が向くかどうかの問題ですので、気が向いたら観てみましょう。


最後の理由として、「第二章を観たら、第一章も観たくなる仕掛けがある」を挙げます。
内容は当然伏せますが、かなりの大仕掛けです。
自分は視聴中、「え?アレがアレって事はつまりアレがアレだった事になるし同時にアレがアレでウワーーーッ」と情報処理が追い付かずパニックになりました。負けです。完敗です。
これは第一章を視聴済みの人に大きく効くものではあるのですが、かなりの衝撃度なので未視聴の人にも効くと思います。

もしストレートに第一章→第二章と順番で観たならば、もう1度第一章を観たくなってしまうので、それならば最初から第二章→第一章の順番で観た方が映画1本分の時間が圧縮できる計算になりますから、時間が惜しい人は第二章から観る予定を立てるのも良いかもしれません。


さて、「第二章から観る」というひねくれた前提であれこれ書きましたが、ストレートに第一章から観る機会が無いわけでは無いので、気が向いた時に簡単に観れる方から観るのが総合的には良いと思います。
とにかく良い作品です。名前だけでも覚えておけば今後何かのプラスになるような、そんなレベルの作品になるのではないかという気がします。

↓公式サイトの上映館情報↓
映画「神と共に」公式サイト » THEATER

(おわり)

映画「神と共に 第一章:罪と罰」の感想

【前置き】
・最高の映画でした。もし現在、観ようかどうか迷っているのなら、今すぐ観るべきです。
・私は映画館でみました。VFX、撮影技術、演技、とにかく映像周りが素晴らしいので、可能なら映画館での視聴がおすすめです。
・本編の内容に触れますが、未視聴の人が読む前提で、台無しにならないよう注意して書きます


はい。前置きの通り、最高の映画でしたので、作品の紹介をした後で良かったポイントを挙げます。

この映画はとある消防士が死ぬシーンから始まります。ビルの火災現場で身を挺して子供を守った勇敢な消防士。彼がこの映画の中心人物、キム・ジャホンです。
自分が死んだことに気付かず、周りの人に話しかけるが誰も返事をしない。誰かに触れようとしても身体がすり抜けてしまう。
主人公死亡から始まる物語のテンプレート通りと言って差し支えの無い、とても解りやすい始まりです。

そんな彼を迎えに死後の世界【冥界】から二人の使者、【警護】のヘウォンメクと【弁護士】のドクチュンがやってきて、「冥界にある七つの地獄で、生前の罪を問う七つの裁判をします。全部無罪だったら生まれ変わることができますよ(ざっくり意訳)」と説明を受け、ジャホンは納得する猶予すら与えられず、冥界へ送られます。
二人の使者達の【リーダー】カンニムと合流し、
ジャホンは状況に困惑しつつも三人の使者と共に七つの地獄での裁判に臨むのでした。

この作品、とにかく映像が凄い。決して予告編で派手なシーンだけをチョイスしているのではなく、本編ではもっともっとド派手な映像が拒否権の無いわんこそばの如く続々と提供されます。豪勢ですね。

特に予告編でも少し流れた市街地戦のシーンは逸品です。
カンニムの衣装が黒のロングコートなのは、この超機動アクションで映えさせる為に逆算して決まったのではないかと視聴中に勝手に想像してしまった程です。
「なぜ冥界の人はこんな超機動アクションが出来るのか?」という点について、作中で明確な説明は無かったと記憶していますが、「まぁ実際そうなってるから良いか」「だって冥界だもん」などと納得してしまう程に映像の説得力がスゴいです。
だって冥界だもん。


作品の核となる部分に「冥界(死後の世界)」「閻魔大王」「輪廻転生」といった、日本でも馴染みのある宗教モチーフが出てきます。
「嘘をつくと死後の世界で閻魔様に舌を抜かれる」的なアレです。
そういった中世からある虚構のモチーフと「弁護人付きの裁判」という現実にある近代の制度のミックスがこの作品の面白さの一つです。
もっとも、現実の裁判とは異なり、被告の行動のありとあらゆる全てが冥界の裁判所にはお見通しで、偽証や黙秘は不可能である為、弁護人は「確かに嘘はついたが、あれはついても良い嘘だ」とか「確かに酷い事はしたが、それには事情があった」という風に、情状酌量の余地を争っていく形になります。
その点で現実との隔たりがあるものの、弁護人が人道的なロジックで以て切々と無罪を主張する様は胸を打つものがあります。
というのも、被告人であるキム・ジャホンくん、超良い奴なのである。そして超苦労人なのである。
あの世にも正義というものがあるのなら、この人は救われなければならない。
弁護人の主張は裁判官だけでなく視聴者にも向けられている故に、映画を観た人も「無罪!この人絶対無罪だよ!」という気持ちにさせられるのです。
自己弁護だけではこうはならない。弁護人付きの裁判だからこその揺さぶりが発生していると思います。

無論、好青年が救われる流れで一本調子のトントン拍子に進むだけの映画ではありません。
下界に残されたジャホンくんの遺族を襲うトラブル。
話が進むに連れて明らかになるジャホンくんの人生の闇。
お話は複雑さを増し、先が読めない展開になっていきますが、その全ては最後の裁判の結果に収束していく構造になっています。上手い。めちゃくちゃ上手いです。

そしてその全てが収束した先の最後の裁判、私はめちゃくちゃ泣きました。
比喩ではなく涙が線になって両目から落ち続ける状態になりました。
ヤバいです。ものすごい破壊力があります。

「嘘をつくと死後の世界で閻魔様に舌を抜かれる」と年長者に言われたところで、実際に「嘘をつくのをやめよう」となる人はほとんどいないと思います。
しかしこの映画を観て「真っ当に生きよう」となる人はかなりの多数派になるはずです。
古今東西のおとぎ話というのはそういった効果を期待して伝承されてきたものだと思いますが、そういった意味でこの作品は「最新のおとぎ話」だと言えます。

「神と共に 第一章:罪と罰
映画館からの帰り道、普段より真っ直ぐな背筋になった気がした素晴らしい映画でございました。
続編も公開が近いので、絶対にみにいく所存です

(おわり)

映画「居眠り磐音」の感想

【前置き】
・筆者は原作未読、過去のテレビシリーズも未視聴
・本編の内容について触れるが、視聴前に知っても台無しにはならないと筆者が判断した最小限の範囲に限る。わずかな情報でも入れずに視聴したい方は注意



映画「居眠り磐音」をみてきました。
松坂桃李が時代劇をやるらしい」という情報のみで視聴を決めた作品なので、事前の知識はゼロ。
「このタイトル、どういう意味なんだろ?」というレベルでの視聴だったけども、開始早々の道場でのシーンで疑問が解ける上に、同じシーンでキャラクター達の立場や関係性が一息に理解できるような易しい作りの映画でした。
アクションにも説得力を感じたし、街や自然の風景もキレイに撮れてて、「よっしゃ、色々頑張ってるみたいだし最後まで付き合うぞ」という気にさせてくれる印象を受けました。実際に最後まで楽しめましたので、良い映画だったと断言できます。


さて。詳らかには書きませんが、この映画、前半の事件が終結した後、時期と場所がジャンプして後半が始まるという構成になっています。
主人公が磐音である以外に前半と後半に共通点は無いように見えるけども、「どうやら前半の事件には隠された事情があるらしい」と後半で磐音と視聴者に示唆されます。が、特にその裏の事情が明らかになることはなく映画は終わります。
私の場合、前半も後半も見所がたくさんあったから十分満足していて、映画館からの帰り道でようやく「あっ!そういえばアレ明らかになってないじゃん!」と気が付いたくらいですので、映画に文句をつける気は全くありません。
しかし、どうしてこういう風になったのかな、あの示唆にはなにか作品外にも含みがあるのかな、という疑問がしばらく頭の中にこびりついたのでした。


以下は私の勝手な想像ですが、おそらく製作サイド(松竹と日テレ)はこの「居眠り磐音」を映画だけで終わらせるつもりはなくて、作品がヒットしたらテレビシリーズに移行する腹積もりがあるのかもしれません。
映画ではいくつかの出来事が決着を見ますが、例の「前半の事件の隠された事情」をはじめ、完全に解決したとは言い難い要素が複数あります。しかしながら、磐音はその全てを解決していく方にしゃんと進んで行く雰囲気で映画は終わります。

大きくて長い物語の、「起承転結」の「起」の部分を映画一本まるまる使って表現した、と仮定するとすごく納得が行く印象があるのです。
あとは「松坂桃李の磐音が良かったのでもっと見たい」という気持ちがあるので、自分に都合の良い想像をしているのかもしれません。
事実はわかりませんが、もしも続編があるのなら確実にチェックします。

いずれにせよ、良い映画でした。
松坂桃李が時代劇」という情報に脳内のアンテナが反応した人にはおすすめです。

(おわり)